MOUTAIN RESEARCH - 2026 condition WARM  “ clockwork cottage ”

 

 

日本のとある標高2500mの稜線のコルに構える山小屋「A92」...そこの小屋の主は学生時代、92年のRAGE AGAINST THE MACHINEの1stに影響を受ける。

RATMの反体制、社会主義思想にどんどんハマり、卒業後選んだ道は山小屋で数ヶ月働いては別の山岳の山小屋へと渡り歩きながら暮らすという社会やインフラに縛られない自由な生き方を選ぶ。そしてRATMのステージでチェ・ゲバラの旗がたなびいていた様に、彼がバックパックでたなびかせていたのはソローとガンディのフラッグ、自分なりの理想とする反体制のヒーローと共に山を渡り歩いた。

数年そんな生活をしていた彼は、ある山脈でA20と言う地図に載っていない小屋に住み込みで働くこととなった。そこで働くうちに、小屋の本棚の隅に置かれた『アナルコマウンテニアーズ』という文書(思想)を読み、そしてこのAというコテージ(実際は規模感や内容でキャビン、ヒュッテ、ハウス色々な名称らしい)はナンバリングを振られ、アナルコマウンテニアーズと名乗る限られた小屋主達によって運営されている事を知る。自分が探していたものはこれかもしれない!と、そのままここで数年山小屋の運営( & アナルコ思想 )を学び、遂に「A92」というウォールデンの小屋を真似た小さな自分のコテージを持つ事ができた。

彼の小屋ではソローとガンディのポスターを貼り、売店で彼らの顔がプリントされたTEEシャツも販売し、日中はRATMを爆音でかけると言う登山客の間でも自然の中で全く落ち着けないというヤバい( 笑 )小屋として噂が...そしてたった1人でこなす彼の仕事といえば宿泊者への食事の提供、小屋の掃除、この小屋までの登山道の整備、晴れた日は屋根で布団を干す作業。。。登山シーズン中の数ヶ月は日々このルーティンがずっと続く。

早朝4時には宿泊客への朝食提供の時間だ。ここ数日の曇天のせいでソーラーパネルは稼働しないのでディーゼル発電を使う、モーター音がけたたましく鳴り響き小屋に明かりが灯され、小屋中にここの名物目玉焼きの焦げる匂いがたち込め、夜8時に発電機の音が消えるまでコテージは鼓動を打ち続ける。

そんな毎日を乗り切る為にザックのラップが自分を鼓舞し今日も自由という糧の元に彼は働く。そしてとうとう恐れていた国の法改正により山の土地使用料の徴収、宿泊名簿の人数把握からその収益まで何から何まで完全に握られることになる。

山は自由じゃなかったのか? ここは体制が手が出せない唯一の場所だったのではないのか? 来る日も来る日も朝4時に起きて夜8時に消灯の毎日、これが自分が掲げた理想だったのか?もしかして自分は時計仕掛けの小屋でただの歯車の役割だったんじゃないか?

彼の自問自答は日に日に深まるばかり。

そして最近登山者からA92のある噂が広まる。雨の夜には必ず爆音で” Common People “を流しA92の主人がクネクネと踊りながら「I wanna live like common people!」と大声で歌っているらしい。

「普通の暮らしがしたいんだ!」ってそう叫ぶその全身には泥が飛び散ろうが構うことなく、きっかり4時まで踊り続けてるって。

そんな時計仕掛けの小屋A92の話。。。