マウンテンリサーチの初期ラインアップの中に、手作りの登山靴が存在していたことがありますが、今回のPYRENEESは、そのイメージをストレートに重ね合わせてみたものです。リースマークの名称でおなじみ(...かもしれない)”A”マークの刻印と、こげ茶色の革、靴紐のカラーリングはまさにその象徴です。
SEtt for Mountain Bootsという名義で幾度か発表をした山靴は、しばし前に引退をされてしまった日本が誇る往年の山靴職人に依頼をすることで、やっと実現にこぎつけた思い入れ深きプロダクトでもあります。時代が変わり今や作ることができなくなってしまった過去の遺物へのオマージュとなるのが本作、そんな心持ちで本コラボレーションのプロジェクトに参加をさせて頂きました。自分にとって、あるいはマウンテンリサーチのチームにとって、なじみが深くよく知るものをKEEN社の力をお借りして、最新モダンかつ機能的なフォルムで蘇らせることができたことは、この上ない喜びだったりもします。
補足にはなりますが、もうひとつこだわったのは、インソールとライニングに(モダンな機能素材ではなく)あえて革を採用したこと。昔ながらの山靴的な仕様ですが、これは足裏の汗を革に吸い取ってもらうことで蒸れを防ぎながら、履き心地の悪化を最低限にとどめるという先人たちの知恵の賜物。オールドとモダンを行ったり来たりですが(すみません)、こんな情緒(的なディティール)を日本の山の景色と合わせて味わって頂けたら嬉しいです。 (小林節正)