2010年頃、バンコクのチャイナタウンのローカルエリア“ワラチャック”の路地裏の空き地で早朝のみ出現する闇市に夢中だった。そのマーケットは普段どうやって生活しているのか全くわからないタイ人がガラクタを持って集まり地べたに並べて販売していた。その中に、いつもいた老婆がどうやって運んで来たのか謎が深まる大量のタイの古いレコードを売っていて、僕はマーケットに警察がやってきて摘発(形式だけで警察もグル)されるまで気になるレコードを片っ端から試聴するのが週末の日課だった。タイの古いレコードは、ジャマイカ盤やインド盤のように状態が悪いものが多く、ジャケットなし、レーベル面も剥がれてる盤も珍しくなく宝探しのようなレコードハントに夢中だった。その時に見つけた一枚の7インチレコードのバンドが“SPACE ECHO MOLAM DUB BAND(สเปซ เอคโค่ หมอลำ ดับ แบนด์)”だ。といってもジャケットもなく、詳細が全く不明だったので僕がそう名付けた。King Tubby Prince Jammy & ScientistのようなSpace Echoを使ったと思われるDUB処理されたモーラム(หมอลำ)の虜となった。モーラムとはラオスやイーサーン(タイ東北部)などにおける伝統音楽である。独特のリズムと伝統楽器ケーン(แคน)という笛の旋律が、DAFT PUNKのトーマの父親、ダニエル・ヴァンガードがプロデュースを務めた<YAMASUKI>を彷彿とさせる摩訶不思議なインチキなメロディーがミックスされたエキゾチックエキセントリックなサウンドに夢中になり、うっすら残ったレーベル面のサムライが火縄銃の代わりに伝統楽器ケーンを構えるイラストを頼りにひたすら探す日々が今も続いている。 このTシャツは年代もレーベル名、正式なバンド名すら不明な“SPACE ECHO MOLAM DUB BAND(สเปซ เอคโค่ หมอลำ ดับ แบนด์)”の一番のファンと公言しているヤンガオのMOOLAがデザインしたGroupie(熱狂的追従者)によるブートレグTシャツです。
*この物語は半分事実で半分フィクションです (text by MOOLA / YANGGAO)。