近年、White Mountaineeringではアウトドアやスポーツの持つ機能性を、旅というキーワードに置き換え、様々な場所に出向き洋服を通して新しい人生経験をするということを求めてきた。単に着飾るということではなく、オケージョンによって自分らしいスタイルを作ることでもあり、実際にプロダクトとして意義がることも含まれる。
例えば、東京から2時間半で到着する長野県軽井沢にある山のアトリエまでの道中は、車やバイクの操作性を意識し、標高1200メートルで寒暖差を感じながらレイヤリング出来る衣服を求め、音楽を聞いたりスポーツをしたりとファッションと同等に生活を楽しむ考えを優先し、都市生活と山生活での快適さを身をもって体験しながらデザインを行なっている。その経験を活かし、今年の春に来た軽井沢でオープンした大きな別荘兼ホテルのディレクションに関わったこともありその思いがさらに強くなっている。
実際にこういった生活が可能となったのは都市と山をクラウド上で繋ぎ仕事をする場所を選ばなくなったという技術の進歩がある。今年でファッションの世界に入って24年になるがデザインを行うという意味では全く異なる手法となった。このテクノロジーの進化は情報という意味だけではなく物作りにおいても大きな進歩があり、機能素材やストレッチ性などプロダクト自体の開発、また3DデザインやCADによって制作過程の向上が進化したこともある。デザイナーの仕事とは技術な向上だけではなくそういった進化にも対応していく時代となってきた。
しかしながら、洋服を着用するという意味においては全く異なると思っている。
私にとって最も重要な”旅”をする事、またその旅先で着飾る事での楽しみやオケージョンによるスタイルの変化などは何十年も変わっていない。テクノロジーの進化を制作に於いて求めることとは切り離し、着用する喜びに繋げていきたいという思いが強くある。
今回のコレクションを通して、海や山、草原や未だ見ぬ都市への旅を想像してきた。
「洋服を着るフィールドは全てアウトドア」を定義してから19年、洋服作りを通して多くの経験を得ることができ、それが今のスタイルへと昇華している中で感じてきた思いとして、今は電源を抜き一つの旅を楽しみたいという理想と提案から「アンプラグド」をテーマとしました。